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BLUE SKY-青空に恋い焦がれる国際配達員の記録

――青空は私達が手を伸ばしても届かないけれど見上げることはできる。獰猛で活発に暴れ回る『モンスター』と呼んでいる生物がいる世界で、国から国へと郵便物や物資を送り届ける、命知らずの『国際配達員』達の物語。

クリスマス

 12月24日。

 目の前にある御馳走の理由を金髪の若い女性に聞いた藍色の髪と瞳を持つ見た目がそっくりな男の子と女の子。
「ジェンナ、ジェンド。今日はクリスマス・イヴだからね」
「「くりすます・いぶ?」」
「そう。好きな物語に出てくるイベントよ。今日の夜と明日は特別な日なんだって」
「へぇ。ママは、ほんとうにものがたりがすきなんだね」
「まぁね」
 藍色の髪と瞳を持つ女の子に『ママ』と言われた金髪の若い女性は少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「どうしたんだい?」
 子供達と同じ藍色の髪と瞳をした青年が玄関から入ってきた。青年は獲物であろう大きな鳥の死骸を掴んでいる。
「「パパ! おかえりー!」」
「ジェット、お帰りなさい」
「ハルナ、ジェンナ、ジェンド、ただいま」
「あのね、きょうは、とくべつなひ、なんだってー。くりすます・いぶって、ママがいってたよ。ママがすきなものがたりででてくるイベントなんだって」
 ジェンナはパパと呼んだ青年に説明をする。
「そうか。だから、今日の夜御飯は豪華なんだね」
 ハルナは、ジェットが持っている鳥の死骸を見つけ。
「ちょうど良かった。ジェット、その鳥ちょうだい。チキンフライにするから」
「わーい! チキンフライだー!」
 鳥をジェットから受け取ったハルナの横で、ジェンドが笑顔で両手を上げてジャンプする。
「ジェンドはチキンフライがすきだもんね」
「うん! ジェンナもすきでしょ?」
「うん。すき!」
「後でデザートとしてケーキも用意しているからね」
「「わーい! ケーキ!」」
 ジェンドとジェンナは二人揃って両手を上げて喜んだのだった。  
 
 
 ジェットとハルナに寝る前の挨拶をしたジェンナとジェンド。ハルナは二人に向かって微笑んだ。
「そうそう。二人共、明日の朝を楽しみにしていてね」
「「?」」  
 
 
 12月25日。

「ジェンド、ジェンド。おきて!」
「む…にぅ……なに、ジェンナ……」
 パジャマ姿のジェンナにうわずった声で起こされたため、やや不機嫌そうな声で返すジェンド。
「なんか、プレゼントのはこがおいてあるの!」
「! プレゼント⁉ どういうこと?」
 眠かった気持ちも吹き飛んで、ガバッとベッドから飛び起きたジェンド。二人のベッドの側にはラッピングされた箱が置いてあった。
「なまえがかいてあるよ。わたしは、あかいはこだね」
「ぼくは、あおいはこー」
 二人は箱を開けてみることにした。
「わぁ、かわいい!」
「いろとかたち、ジェンナとぼくと、すこしちがう?」
「ほんとうだ。でも、おそろいのコートだね!」
 ジェンナは赤色のコート、ジェンドは青色のコートを抱えてはしゃぐ。
「ジェンナ、ジェンドー。起きてるかい?」
「二人共ー、今日はおでかけするよー」
 はしゃぐ二人をベージュのコートを抱えたジェットとハルナが呼びに来た。
「「はーい!」」  
 
 
 今日は、この家族にとって素敵な一日になるだろう。

ハロウィン

「「はろうぃん?」」
 藍色の髪と瞳を持つ見た目がそっくりな男の子と女の子は二人揃って首を傾げた。
「ええ、何でも『モンスターの仮装をして秋の収穫を祝って悪い霊を驚かせて追い出す』んですって。物語の中で出てくるお祭りなんだけどね。ジェンナ、ジェンド、これよ」
 金髪の若い女性はテーブルに一冊の本を開いて子供達に見せた。挿絵には怖い仮装をしている絵が描かれている。
「これって、ママがいつも読み聞かせてくれた本だよね?」
 男の子が挿絵を覗き込むように見ながらママと呼ばれた金髪の若い女性に話しかける。
「でも、私達もモンスターと似たようなモノじゃない?」
 男の子と同じように挿絵を見ながら女の子が言う。
「ドラゴンをモンスターと一緒にするんじゃありません!」
「ハルナ、いいんだよ」
 かけられた声の方向を見れば、子供達と同じ藍色の髪と瞳をした青年が玄関に立っている。青年は獲物であろう鹿の死骸を掴んで苦く笑っていた。
「ジェット!」
「「パパ! おかえりー‼」」
 子供達がパパと呼ばれた青年に抱きつく。青年は鹿の死骸を持っている手とは逆の手で子供達の頭を交互に撫でた。
「ただいま。ハルナも知ってるだろう? 僕達、ドラゴンはモンスターではないが、見た目が怖いからね。人間達にとっては僕達もモンスターと変わらないんだよ」  
 
 
 バンッ!  
 
 
 三人は目を丸くして驚く。両手でテーブルを勢い良く叩きつけて立ち上がるハルナに気圧されたのだ。
「そんなことない! 少なくとも、貴方達にはそう思って欲しくない!」
 ハルナが顔を上げると、目が潤んで今にも泣きそうだった。
「「「ご、ごめんなさい……」」」
 唯一の理解者であり、唯一の大切な人の怒りと悲しみに触れ、父子は揃って謝罪する他なかったのだ。  
 
 
 ◆ ◆ ◆  
 
 
「はろうぃん? あぁ。ハルナが好きな物語のか」
 あれから、宥めに宥めてハルナの機嫌を回復させた父子は、ハルナの得意料理である鹿肉のデミグラスシチューを晩御飯に食べていた。
「そう。ジェット、覚えていてくれたんだ」
「まぁね。でもさ、変わった話だよね。ガルおじさん曰く、この世界でのその役目は本来なら僕達ドラゴンらしいよ」
「え? そうなの⁉」
「父ちゃん、それ本当か⁉」
 双子の弟であるジェンドは時折『パパ』『ママ』ではなく『父ちゃん』『母ちゃん』と呼ぶことがある。
「ああ。今日、狩りの最中にバッタリ会ったんだけど、ハルナが好きな物語を知っているガルおじさんが教えてくれたんだ。でも、今じゃ個体数も減っていて役目を果たせそうにないらしい。モンスターが獰猛で凶暴化したのもそのせいかもって。詳しい因果関係はわかっていないらしいけど」
 ジェットはガルおじさんが語った話を思い出しながら、みんなに語る。

『本来なら強いドラゴンだが、人間達が自然を守り、ドラゴンを敬うことで更に強くなることができる。だが、自然を壊そうとし、ドラゴンを恐れた人間達。獰猛で凶暴化したモンスターがドラゴンの子供を狙い、元々繁殖力が強くないドラゴン達は徐々に数を減らしていったのは間違いないだろう。天敵が数を減らしたことでモンスター共は益々獰猛で凶暴化していく。凶暴化する要因の一つに【悪い心で汚れた魂を喰らった】のではないか。それがオレらの見解だな』

 ジェットは「『オレら』? 他のドラゴンも同じ見解なんですか?」と聞いたが、「オレと同じかオレよりも古くからいるドラゴンだ。近いうちに会うだろう」と言われただけで答えてくれなかったことも思い出していた。
「へぇ、そうなの」
「でも、私達は魂なんて見えないよ?」
「僕も!」
「僕は一応見える。大人のドラゴンは見えるからね。でも、見てもいいものじゃないからなぁ。そうだ。ガルおじさんが良い物をくれたんだよ。晩御飯を食べ終わったら見せるね」  
 
 
「ねぇ、ジェット。良い物ってこれ?」
 ハルナとジェンナは魔女の格好、ジェットとジェンドは吸血鬼(ドラキュラ)の格好をしていた。
「そうだよ。ガルおじさんに会った時にね、ガルおじさんの知り合いのドラゴンが一緒にいたんだ。知り合いのドラゴン曰く、上司である女ドラゴンが、ハルナと同じように物語を読むのが好きらしくて。で、物語に登場する人物の衣装を作ったはいいんだけど、他のドラゴンに着せようにも皆『興味ない』って着てくれないんだって。ガルおじさんにも要らんと言われて『貰い手がいない』って知り合いのドラゴンが困っていたから貰って来たよ。楽しそうでしょ? そうそう。せっかくだから、製作者である女ドラゴンが遊びに来たいって言うから招待したよ。もうすぐで来るんじゃないかな。皆で出迎えてあげよう」
「「はーい」」
「ジェット、こういう大事なことは、もう少し早く言ってくれないかな?」
 ハルナはジェットに呆れたような顔を向ける。
「あはは……ごめんね」
 ジェットは苦笑いでハルナの頭を撫でて謝る。
「いいけど……もぅ。仕方がないなぁ」
 こうなると、ハルナは強く言えなくなってしまうのだ。

「あ。誰か来たみたいだよ!」
 玄関のドアが数回ノックされたので、ジェンドがジェットに声をかけると、ジェットはドアに近づいていき、ドアについている覗き窓から来客を確認した。

「来たみたいだね。ようこそ」
 事前に聞いていた特徴と一致していたので、ドアを開けて来客を招き入れるジェットに。
「やぁ。招待されてやってきたよ。私はエリザリアと言う。エリザと気軽に呼んでくれ」
 20代くらいに見える緑色の髪と金の瞳を持つ若い女性が笑顔で家に入って来た。

「さて。物語では何と言うのだったかな?」
 家族は顔を見合わせて、にっこりと微笑むと。  
 
 
「せーの!「「「トリックオアトリート!!」」」」  
 
 
 その後、エリザリアが、ガルおじさんと同じかそれよりも長く生きるドラゴンで、しかも初代『国際配達員』だと知り、家族一同かなり驚くのだった。

【BLUE SKY-青空に恋い焦がれる国際配達員の記録】サイトを作りました!

弓月キリです。
「春には連載開始目標!」と言っていて、もう5月になってしまっていました。
プライベートでも色々とあったのもありますが、お話は書けるのに資料サイトができていないからと連載開始をいつまでも延ばすのも良くないなと思い、先行で連載前に色々と小話をアップすることにしました。
こちらは『おまけサイト』のつもりで考えていますが、場合によっては、ここで連載開始するかもです。

何にしても、良かったら見ていただけたら幸いです。
いっぱい読み応えのあるサイトになるといいな。頑張るよ!

『BLUE SKY-青空に恋い焦がれる国際配達員の記録』とは?

ドラゴン好きだし、青空も好き。好きなものを詰め込めるだけ詰め込みたくて作ったお話です。
元々短編集のネタだったんだけど、個人的に物凄く作っていて楽しくて、いつの間にか長く続けていきたいと思うようになった思い入れのある話でもあります。

詳しくはポートフォリオサイトのBLUE SKY特集ページでね!
yudukikiri.thukiyo-yorozuya.net

※色々とページを整備してきたぞ!

テーマ

『頭空っぽで、ほっとする話を読みたい人に読んでほしい、まったりのんびり中心ストーリー』

コンセプト(目標)

『1ヶ月・2ヶ月に一度の更新頻度でも「続きを待ってたぜ!」と思ってもらえるような飽きにくいストーリー』
『数時間でサクっとできるストーリー(長く続けるために必要)』

え? 深い理由なんてないよ?
頭空っぽで、読んでほしいから難しい設定も用意するつもりはないし。
合わないと感じたら、静かにブラウザバック(またはブラウザの閉じるボタンを押)してくれ。

あらすじ

――青空は私達が手を伸ばしても届かないけれど見上げることはできる。獰猛で活発に暴れ回る『モンスター』と呼んでいる生物がいる世界で、国から国へと郵便物や物資を送り届ける、命知らずの『国際配達員』達の物語。

このサイトを作った経緯

本当は資料サイトを作ってから(話投稿用のサイト、またはカテゴリを)作ろうと思っていました。
あと、はてなブログではなくWordPressで作ろうとも思っていたのですが、作業時間が中々取れず……。
先に始動させたかったのもあり、実装が早い、はてなブログで作ることにしました。

今の所、こちらは本編連載開始前の準備サイト(おまけサイト)のつもりで考えていますが、管理が楽だったりしたら、そのまま本編も更新するかもしれません。

バナーを作成しました。

よかったら、よろしくね!
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使用フォント

手書き風フォント「からかぜ」

enuoka.booth.pm

木漏れ日ゴシック

modi.jpn.org

ドラゴンシルエット

シルエットデザイン

kage-design.com